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早朝、ガッタン、ゴットン。薄汚れた車体を右や左にゆすりながら、市内電車が姪の浜停留所についた。
姪浜の朝は、この電車の到着で明ける。昔の面影が残る裏町、旧街道。大きな旧家、小さな家、新しい住宅街からサラリーマン、OL、学生が停留所の広場に集まってくる。
「ペチャ、クチャ、ペチャ、クチャ」。もうみんな顔なじみ。毎日同じ時間に来て、同じ電車に乗る電車友達。天気の話から、最近の物価の話。姪浜の船だまりに釣れだしたカレイの話から、様子が変わる能古島の話まで、話題はつきない。
ここで若い男女が恋仲になり、また別のカップルは、さっぱりと分かれて、別々の電車で天神に出て行った。
出勤時間はものすごく混み合って、電車に乗るのも押し合いへし合い。そして、ピークがすぎると孫の手を引いたお年寄りが、のんびりと電車を待つ。
「最近、車の往来が激しくて電車の乗り降りがこわい」とおばあさん。「こんど地下鉄が来たら、町のようすがどんなに変わることやら…」と心配そうな様子だった。
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