愛宕下
 愛宕神社は、願かけの神様。競馬断ち、酒断ち、はては女狂いの縁切りから、商売繁盛の願かけまで、なんでもござれのご霊験。おまけに神社の横の食堂、まんじゅう屋の、おでんとまんじゅうがうまい。

 下から見れば、大きな石段と、まがりくねっただらだら坂が、社殿まで見え隠れ。

 その愛宕神社を見上げるように、電車が走る。

 しかし、ここも都市化の波で大変だ。山は大きく切り開かれ、神社の下に、神社よりも大きいマンモス・マンションがドカンと腰をすえた。

 「いやあ、昔はよかったですな。愛宕さんには、ケーブルカーが走っとたですよ」と小店の老婆は昔を懐かしむ。

 狭い道路を、バスが走る。マイカー、オートバイ、自転車。そのなかを電車が申し訳なさそうな顔をしてガタ、ゴト。人間様も、道路のすみっこを肩をすぼめてちょろちょろ。

 やがて、チンチン電車が、ねむたそうに愛宕さんの前を通っていたころがよかった…などという時代が来るに違いない。