地 行

 城下町のたたずまいを残すこの町には、有名な碑が二つある。一つは、派出所横の平野神社にある、平野国臣の碑。もうひとつは、地行電停から、今川橋に向かって左手に、福岡が生んだ硬骨の政治家、中野正剛の碑である。

 略伝に「戦局日ニ非ナルヲ知リ東条内閣ノ退陣ヲ企リ其ノ収拾ニツトメシモ志成ラズ。昭和十八年七月二十七日自刃。歳五十八」とある。戦時中の暗い思いでのひとつ。中野正剛自刃のニュースに、身の凍る思いを体験した福岡市民はまだ数多い。

 中野正剛の碑をぬけると、そこは鳥飼神社の境内である。やわらかい秋の日差しの中で、若い夫婦が幼い子供と3人で、ハトにエサをやっている。

 平和のシンボルといわれて大事にされたハトも、こう多くてはかなわぬ。ハト公害。なんとかしてくれと、あっちからもこっちからも不満の声が上がっているが、人間の知恵はまだハト追放の理由を見つけ出していない。

 ゴーという電車の音にも、バスやダンプの音にも驚かぬハト。ハトにとっては、ここはまさに平和境というところか。