唐人町

 「福岡市は営業が継続できる移転補償をせよ!黒門地区移転対策協議会」
 あと1カ月後にはじまる地下鉄工事。だが、この工事による移転補償の話し合いは、まだ解決に至らない。

 福岡大空襲の時も、不思議に被害をまぬがれた、電車道わきの古い民家に、降ってわいたように起こった移転問題。

 知らない町に移って、果たして思うように商売ができるか。この付近のお店は、明けても暮れてもそのことばかりで家族会議。「結局は同じ議論のくりかえし。結論は出まっせん」とある店の主婦。

 しかし、工事の始まる11月は確実に1歩、1歩近づいてくる。その1日1日が町民に不安といらだちをつのらせる。

 「唐人町」。読んで字のごとく、その昔、捕らわれの身となった唐人たちの住んだ町。異国人とさげすまれて、じっと耐えてきた町。

 その町に、いま生活権をかけての闘争が展開されている。

 歴史は、違った形で繰り返されている。

 毎日親しんだ、チンチン電車を見送る住民たちの目に涙が浮かぶ。